○設楽町森づくり基本条例

平成21年3月2日

条例第2号

近年、森林への期待は、これまでの国土の保全、水源のかん養、木材その他の林産物の生産といった機能に加え、自然環境の保全、公衆の保健休養、更には地球温暖化防止の機能など、ますます多様化・高度化している。

森林の管理は、これまで林業という経済活動を通じて行われることが中心であったが、現在では木材価格の低迷から林業の採算性が極めて悪化しているため、管理の行き届かない手入れ不足の森林や放置されたままの森林が目立っており、森林が本来有している多面的機能が十分発揮されない状態が続いている。

このような状況の中、平成21年度から愛知県においてあいち森と緑づくり税が導入され、既存の施策では十分に進まない奥地林や公道沿いの森林の間伐などが実施される。設楽町を含む新城北設楽地域は、これを機に人々の暮らしとは切り離せない森林の恵みや忘れかけてきた森林を慈しむ心を再確認するとともに、森林の有する多面的機能の発揮と森林環境の高度化のために全力を尽さなければならない。

こうしたことから、私たちは長期的展望に立ち、森林所有者や林業関係者のみならず町民一人ひとりが森づくりに真剣に取り組むことを目指し、新城北設楽地域の関係市町村共同の取組として、ここに森づくり基本条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるための基本理念を定め、町及び森林組合の責務並びに森林所有者、町民及び事業者の役割を明らかにするとともに、森づくりに関する施策その他の取組を総合的かつ計画的に推進することにより、豊かな森林環境、森林資源を次世代に継承し、もって住み良い地域をつくることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 森林 町内に存在する森林法(昭和26年法律第249号)第2条第1項に規定する森林(竹林を含む。)をいう。

(2) 森林の有する多面的機能 土砂流出又は山地崩壊の防止、洪水軽減、水源のかん養、自然環境の保全、地球温暖化の防止、保健休養、木材その他の林産物の生産及び供給その他森林の有する多面にわたる機能をいう。

(3) 森林の有する公益的機能 森林の有する多面的機能のうち、木材その他の林産物の生産及び供給を除いた機能をいう。

(4) 森づくり 森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるため、森林を守り育てるとともに活用することをいう。

(5) 森林組合 町内に所在する森林組合法(昭和53年法律第36号)に規定する組合をいう。

(6) 森林所有者 町内にある森林の土地を所有する者又は森林の土地にある木竹を所有し、若しくは育成することができる者をいう。

(7) 町民 町内に居住し、通勤し、又は通学する個人をいう。

(8) 事業者 町内において事業若しくは活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(9) 森林関係の事業者 前号に掲げる事業者のうち、森林の施業並びに木材その他の林産物の生産、加工及び流通の事業を行う者(森林組合を除く。)をいう。

(基本理念)

第3条 町、森林組合、森林所有者、町民及び事業者は、この条例の目的を達成するため、適切な役割分担のもとに相互に連携及び協力し、次に掲げる基本理念に基づいて森づくりを行うものとする。

(1) 森林の有する公益的機能が持続的に発揮されるよう、長期的な展望に立った森づくりを行うこと。

(2) 林業及び木材産業の健全な発展につながるよう、その振興を図り、木材資源の循環利用を推進すること。

(3) 地域の活性化につながるよう、地域づくりと一体となった森づくりを推進すること。

(4) 森林の適正な整備及び保全が継続的に行われるよう、森づくりを担う人材の育成を図ること。

(町の責務)

第4条 町は、この条例の目的を達成するため、森づくりに関し総合的かつ計画的な施策の推進に努めなければならない。

2 町は、国、他の地方公共団体、公共的団体等に対し、必要に応じて理解と協力を求め、森づくりの円滑な推進に努めなければならない。

3 町は、森づくりに関する情報の提供を通じて、町民はもとより町外の人々がこの条例の基本理念について理解を深めるよう努めなければならない。

(森林組合の責務)

第5条 森林組合は、森林管理の中核的な担い手として、木材その他の林産物の生産及び供給を通じて森づくりに積極的に取り組まなければならない。

2 森林組合は、森林の管理が適正に行われるよう当該組合員に働きかけるとともに、計画的に森づくりに関する施策を推進するよう努めなければならない。

3 森林組合は、森づくりに関する各種施策に協力するよう努めなければならない。

(森林所有者の役割)

第6条 森林所有者は、森づくりの重要性を深く認識し、自らが所有又は育成する森林について、森林の有する多面的機能が十分に発揮されるよう努めるものとする。

2 森林所有者は、その所有又は育成する森林の境界及び木竹の状況を把握し、その適正な整備及び保全の推進に努めるものとする。

3 森林所有者は、森づくりに関する各種施策に協力するよう努めるものとする。

(町民の役割)

第7条 町民は、森林の有する公益的機能が町民共有の財産であることを認識し、森づくりに関する取組に協力又は参加するよう努めるものとする。

2 町民は、町内又は県内で生産される木材その他の林産物を積極的に活用するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第8条 事業者は、森づくりに関する各種施策に協力するとともに、自然環境への負荷を低減に努めるものとする。

2 森林関係の事業者は、森林の有する公益的機能が十分に発揮されるような森づくりに努めるとともに、木材その他の林産物の循環利用の推進に努めるものとする。

(森づくり基本計画)

第9条 町長は、森づくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、森づくりに関する基本的な計画(以下「森づくり基本計画」という。)を定めるものとする。

2 町長は、森づくり基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。

(森林の整備及び保全の推進)

第10条 町は、森林の整備及び保全を推進するため、造林、保育その他の森林の施業を計画的かつ適切に実施するものとする。

2 町は、前項に規定する森林の整備及び保全を効率的に行うため、森林所有者及び森林関係の事業者に対し、森林の施業を一体的に実施するよう要請するものとする。

(林業及び木材産業の健全な発展)

第11条 町は、林業及び木材産業の健全な発展を図るため、森林施業の効率化、経営基盤の強化その他必要な施策を実施するものとする。

2 町は、林業及び木材産業に従事する人材の確保と育成を図るため、就業に関する情報の提供、就労条件の改善その他必要な対策を講じるものとする。

(木材の利用の拡大)

第12条 町は、木材の利用の拡大を図るため、木材を利用する意義に関する情報の提供、建物及び工作物における木材の利用の促進、木材の新たな需要の開拓その他必要な施策を実施するものとする。

2 町は、公共の建物又は工作物を整備する場合には、町内又は県内で生産される木材その他の林産物を利用するよう努めなければならない。

(地域づくりを通した森づくり)

第13条 町は、地域づくりを通して森林の有する公益的機能の維持及び増進を図るため、生活環境の整備、特産物の生産の振興その他必要な施策を実施するものとする。

2 町は、健康でゆとりと活力のある町民生活に資するため、地域の特性を生かした都市部との交流その他必要な施策を実施するものとする。

3 町は、古くから伝承されている森林に関する知恵や文化を次世代に継承するための取組を支援するものとする。

(町民の森づくり活動の推進)

第14条 町は、森づくりに対する町民の理解を深めるため、必要な情報の提供を行うとともに、自然体験活動その他の教育又は学習活動を通じて森を大切にする心の醸成に努めるものとする。

2 町は、町民又は町民の組織する団体が自発的に行う植林活動その他の森づくりの活動を推進するため、必要な支援を行うものとする。

(森づくりの普及啓発)

第15条 町は、町民及び下流域など周辺市町村の人々が森林の有する多面的機能について理解と関心を深め、森づくりに関する活動に積極的に参加する意欲を高めるため、森づくりの普及啓発期間を設けるものとする。

2 町は、森づくりの普及啓発期間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(森づくり会議)

第16条 町長は、森づくりに関する各種施策を円滑に推進するため、設楽町森づくり会議を設置することができる。

(立入調査)

第17条 町長は、この条例の施行に必要な調査のため、職員を森林に立ち入らせることができる。

2 前項の規定により立入調査をする職員は、身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示するものとする。

(関係法令の遵守等)

第18条 何人も、森林に立ち入る際には、関係法令を遵守するとともに地域の社会慣習を尊重し、森林環境の保全に努めなければならない。

(委任)

第19条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、町長が別に定める。

この条例は、平成21年4月1日から施行する。

設楽町森づくり基本条例

平成21年3月2日 条例第2号

(平成21年4月1日施行)